遺言を残すことのメリット

こんにちは、行政書士の奥田です。
今回は「遺言」について書きたいと思います。
「遺言」と聞くと、死期が近づいていたり、何か特別な理由がある人だけが書くもので、特に「まだ元気でバリバリやっているよ」という方は、自分には関係がない話、あったとしてもまだまだ先の話、そもそも遺言って何なのかよくわからない、と考えている方も多いのではないのかと思います。
では、遺言を残すことは、どういうことなのでしょうか。
今回はその点を中心に書いていきたいと思います。
遺言とは
遺言とは、(主に財産に関する)「被相続人(遺言者)の最終の意思表示」です。
※財産のほかに「〇〇を認知する。」等、身分事項に関することもありますが、ここでは、財産に関することを主に書きます。
自分がこれまでに築き、守ってきた財産を、誰に、何を、どのような形で、どれだけ渡したいかを、遺言という形に残しておくことで、その方の意思を残された家族達に伝えることができます。
※遺言は相手のいない単独の法律行為であり、このため誰かの承諾は必要なく、自分自身で決めることができます。
遺言を残すメリット
遺言を残しておくことで、以下のようなメリットがあります。
■相続人同士が争うことを防ぐ
遺言がない場合、相続人全員で、財産をどのように分け合うかを協議することになります(遺産分割協議)。民法で定められた”法定相続分”というものがありますが、具体的に財産の帰属を決めるには、この遺産分割協議が必要になります。
これがスムーズに進められればよいのですが、たとえ「うちは仲の良い家族だから大丈夫!」と思っていたとしても、相続人の事情や気持ちはそれぞれですから、ぶつかり合ってしまい、争いに発展し、しまいには家庭裁判所で調停や審判を、、ということになってしまうこともあります。
また、当の相続人の間だけでなく、相続人ではない配偶者や子供等が話し合いに介入してきたりして揉め事になってしまう、ということも考えられます。
仲の良いはずだった家族が、自分の死後、自分が残した財産のことで争ってしまうのは、想像したくないですよね。
このため、遺言で、例えば「Aには不動産を、Bには預貯金を、Cには現金を…」と記しておけば、「残してくれたこの遺言に従って分け合おう」とトラブルを回避できる可能性がぐっと上がります。
■相続手続きの負担を軽減してあげられる
上記のとおり、遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。残された財産を自分たちでどのように分けるかを自分たちで決めることは、それぞれの事情や思いがありますから容易ではありませんし、非常に時間がかかります。また、精神的な負担も多くかかってくるかと思います。
また、円満に話し合いができたとしても、その後の相続の手続きは非常に煩雑で、手間も時間も費用もかかります。
例えば、残された財産をすべて洗い出して、財産の目録を作成したり、相続人が誰であるかを証明(確認)するために多量の戸籍謄本を収集したり、、難しい作業や手続きが待っています。
それから、相続人に未成年の方がいた場合、遺産分割協議をするためには、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなければならない、という問題もあります。
そこで、遺言として、「誰に、何を、、」とはっきりと残してあげれていたら、これらの負担は軽減させることができます。
■自分の意思で分け方を決められる
例えば、「(相続人の中でも)Aには日頃から助けてもらっていて本当にお世話になって感謝している。だから、Aには他の家族よりも多くの財産を残してあげたい。」という思いがあったとしたら、遺言で指定することで、自分の死後、その思いを叶えることができます。
■相続人以外の人にも財産を残すことができる
遺言がない場合、財産は相続人で分け合うことになります。しかし、相続人以外の人で、自分の財産を残してあげたいという場合もあろうかと思います。
例えば「長男のお嫁さんには、毎日付きっきりで身の回りの世話をしてもらった。だからお嫁さんにも財産を残してあげたい。」という場合です。
この場合も、遺言という形に残しておくことで財産を残すことができます(遺贈といいます。)。
それから、仮に「相続人がいない」という場合に、「お世話になった〇〇さんに託したいな」「〇〇に寄付したいな」という思いがあれば、遺言に残しておくことでそれを実現することができます。
※相続人が存在せず、遺言もない場合は、その方の遺産は最終的には国庫に帰属する(国のものとなる)と民法に規定されています。
■残された人にメッセージを送ることができる
財産の分け方の指定のような、法的な効力を持たせる事項(法定遺言事項)ではありませんが、「付言事項」といって、通常は遺言の最後に、残された家族達に感謝のメッセージや、今後の希望を書き残すということができます。シンプルにメッセージを伝えるのでも良いですし、遺言に残した事項の補足や説明をして、相続を円滑に進められるようにと書き残すこともできます。
最後に
いかがでしたでしょうか。
遺言を残すことは「自分には関係なさそう」「まだ若いし」「うちの家族はみんな仲良しだし、うまくやってくれるだろう」と考える方も多いでしょうが、遺言を残すことはこのように様々なメリットがあります。逆に、遺言を残しておかないと、様々な問題が起こるリスクがあるということです。
自分がいなくなったあと、残された家族達が困らずに暮らしていけるように、一度、遺言という形で残してみようかな、と考えるきっかけになれば幸いです。
今回は、遺言を残すことのメリットを中心に書きました。
次回はもう少し遺言について具体的な内容について書いていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。