相続手続きって何をするの?全体の流れと“つまづきやすいポイント”を解説

はじめに
ご家族が亡くなられた後に、「まず何をすればいいんだろう…」と途方に暮れる方はとても多いです。
葬儀が終わり、少し落ち着いたころに「相続の手続きをしなければ」と気づく。でも、何から手をつければいいのか、どこへ相談すればいいのか、さっぱりわからない——そんなお声をよくお聞きします。
相続手続きは、種類が多く、それぞれに期限があったり、必要書類が複雑だったりと、慣れない方には非常に混乱しやすいものです。
この記事では、相続手続きの全体の流れと、つまずきやすいポイントをわかりやすく解説します。全体像をつかむことで、「次に何をすべきか」が見えてきます。ぜひ最後までお読みください。
相続手続きの全体の流れ
相続手続きは、大きく分けると以下の流れになります。
STEP 1|相続人の確定
まず、「誰が相続人なのか」を確定させます。
STEP 2|財産の調査と整理
故人(被相続人)がどのような財産(負債も含みます)を持っていたかを調べます。
STEP 3|遺産分割の話し合い(遺産分割協議)
相続人全員で、財産をどのように分けるかを話し合い、合意します。
STEP 4|各種名義変更・手続き
預貯金の解約・払い戻し、株式の名義変更(口座移管)、不動産の名義変更(相続登記)などを行います。
STEP 5|相続税の申告(必要な場合)
相続財産が一定額を超える場合は、相続税の申告・納税が必要です(相続開始から10カ月以内)。
この流れを意識するだけで、「今、自分はどのステップにいるのか」が把握しやすくなります。
手続きでつまづきやすいポイント
相続手続きには、特に以下のような場面で多くの方がつまづきます。
・相続人が誰なのかわからない
法定相続人の範囲や順位は、法律で決まっています。「子供である私たちが相続人だろう」と、なんとなくわかっているつもりでも、実際に戸籍を収集して確認をしていくと、”離婚歴があった””認知した子供がいた”などの思わぬ事実が判明して、想定外の相続人が現れることもあります。
・財産の全容がつかめない
故人(被相続人)が持っていた預金口座や株式、不動産の詳細が家族にも把握されていないケースは珍しくありません。
・期限があることを知らなかった
相続放棄は「(相続開始を知った日から)3か月以内」、準確定申告は「(相続開始を知った日の翌日から)4か月以内」など、期限が設けられている手続きが複数あります。これらを知らずに期限を過ぎてしまうと、相続に関する選択肢が大きく狭まってしまうことがあります。
・相続人全員の合意が取れない
遺産分割においては、相続人全員の合意が必要です。1人でも反対すると、手続きを進めることができません。
・必要書類が多くて大変
戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書など、集める書類の量は想像以上です。
相続人の確定(最初の重要ステップ)
相続手続きで最初にすべきことは、法定相続人が誰かを正確に確定させることです。
法定相続人は、民法の規定によって決まります。配偶者は常に相続人となり、子ども→父母→兄弟姉妹の順に相続権が生じます。
相続人の確定には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)をすべて取り寄せる必要があります。これが思いのほか手間のかかる作業です。本籍地の移転があれば、複数の市区町村に請求しなければなりません。
また、戸籍を調べる中で、把握していなかった子ども(婚外子・認知した子)が判明するケースも実際にあります。相続人の確定は、その後の遺産分割や各種手続きの基礎となるため、正確に行うことが非常に重要です。
財産の調査と整理
相続人が確定したら、次は財産と負債の全容を把握します。
調査すべき主な財産の種類
・預貯金:通帳・キャッシュカードを確認し、取引のある金融機関を特定します。
・不動産(土地・建物):固定資産税の納税通知書や権利証(登記識別情報)等が手がかりになります。
・有価証券(株式・投資信託など):証券会社からの郵便物などが参考になります。
・生命保険:保険証券を確認します(受取人が指定されているものは遺産分割の対象外になることもあるので注意が必要です)。
・負債(借入金・ローン・連帯保証など):郵便物、通帳の引き落とし履歴、信用情報の確認などが有効です。
注意点:負債も、プラスの財産と同様に相続されます。
預貯金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借金などの「マイナスの財産」も相続の対象です。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄(相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申立て)等の手続きも選択肢となります。適切な判断をするためにも、財産調査は早めに進めることが大切です。
遺産分割の話し合い(遺産分割協議)
財産の全容が把握できたら、相続人全員でどのように遺産を分けるかを話し合います。これを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議の大切なルール
・相続人全員の参加と合意が必要です(1人でも欠けると無効になります)。
・話し合いがまとまったら「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・押印(※実印)します。
・この協議書は、銀行の手続きや不動産の名義変更に必要になります。
遺言書がある場合
故人(被相続人)が遺言書を残していた場合は、原則として遺言書の内容が優先されます。自筆証書遺言が見つかった場合、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。うっかり開封してしまうと過料の対象になる恐れもあるため、まずはそのまま専門家へ相談することをお勧めします(※法務局の保管制度を利用している場合は検認不要です)。
話し合いがまとまらないときは
相続人の間で意見が合わない場合は、家庭裁判所での「遺産分割調停」という手続きを利用することができます。
名義変更などの各種手続き
遺産分割協議がまとまったら、いよいよ各財産の名義変更や手続きに入ります。
預貯金の解約・払い戻し
亡くなった方の預貯金は、金融機関が逝去の事実を把握した時点で口座が凍結され、引き出しができなくなります。預貯金を相続人が受け取るには、遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書などの書類を準備して解約・払い戻しの手続きを行う必要があります。金融機関ごとに所定の書式やルールが異なるため、複数の口座を並行して進める場合は、想像以上に時間と労力を要する作業となります。
不動産(相続登記)
不動産を相続した場合は、法務局で名義を書き換える「相続登記」が必要です。2024年4月からはこの登記が義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると罰則(過料)の対象となるため、これまで以上に早めの対応が求められます。特に名義変更を放置したまま次の相続が重なると、相続人が増え手続きが非常に複雑になります。
その他の手続き
上記以外にも、財産の内容に応じて以下のような手続きが必要です。
・有価証券:株式や投資信託などは、被相続人の取引先証券会社で所定の相続手続きを行い、相続人名義の口座へ移管します。なお、相続人が証券口座を持っていない場合は、口座開設が別途必要になります。
・自動車:管轄の陸運局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)にて移転登録の手続きを行います。
💡 相続税の申告(対象者のみ)
手続きの中でも特に注意が必要なのが「相続税」です。財産の総額が基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合、亡くなった日から10か月以内に税務署への申告と納税を行わなければなりません。期限を過ぎると加算税などのペナルティが発生する場合があるため、早めの財産評価が不可欠です。
行政書士ができるサポート
相続手続きには多くの種類があり、複数の機関への対応が必要です。弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、相続の状況や内容によって、関わる専門家もさまざまです。
行政書士は、主に以下のサポートが可能です。
戸籍収集・相続関係説明図の作成
被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、相続人全員の戸籍を収集します。請求先が全国各地の市区町村に及ぶ場合も、まとめてお任せいただけます。収集した情報をもとに、相続関係を一覧化した「相続関係説明図」を作成します。
財産調査・財産目録の作成
預貯金や不動産、有価証券など、被相続人が遺した財産の全体像を把握するための調査を行い、財産目録としてまとめます。何が・どこに・どれだけあるかを整理することで、その後の遺産分割協議をスムーズに進めることができます。
遺産分割協議書の作成
相続人全員の合意内容をもとに、法的に有効な遺産分割協議書を作成します。
各種相続手続きのサポート
作成した遺産分割協議書をもとに、預貯金の解約・払い戻しをはじめ、有価証券・自動車など、各財産の相続手続きに必要な書類の取りまとめや金融機関・各種機関への対応をサポートします。
まとめ
相続手続きは、相続人の確定から始まり、財産調査、遺産分割協議、各種名義変更と、多くのステップを経て完了します。それぞれに必要書類や期限があり、慣れない方にとっては大きな負担となります。
大切な方を亡くされた後、悲しみの中でこれらの手続きを一人で抱えようとせず、専門家への相談も選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
行政書士は、戸籍の収集から財産調査、遺産分割協議書の作成、各種手続きのサポートまで、相続手続きの多くの場面で皆さまのお力になることができます。
「何から手をつければいいかわからない」という段階からでも大丈夫です。ぜひお気軽にご相談ください。
