相続人確定のための戸籍収集の基本|何をどこまで集めればいい?

はじめに

相続が始まると、金融機関や法務局から「相続人がわかる戸籍一式をご用意ください」と言われる場面に出会います。ところが、いざ集めようとすると、「何をどこまで集めればいいのか、見当がつかない」という方も多いのではないでしょうか。

しかも、戸籍を集めて読んでいくうちに、「実は離婚歴があった」「認知した子どもがいた」など、思わぬ事実が判明し、想定していなかった相続人が現れることもあります。

実際にご相談を受けていると、

  • どこの役所に請求すればいいのかわからない
  • 戸籍が何枚も出てきて、読み方がわからない
  • 今手元にある戸籍だけで足りているのか、まだ他にあるのか判断できない

といったお悩みをよくお聞きします。

この記事では、相続人確定のための戸籍収集について、何を集める必要があるのか、どうやって集めるのか、そして集めた戸籍をどう読み解いていくのかを、基本からわかりやすく解説します。

なぜ相続手続きで戸籍が必要なのか

そもそも、なぜ戸籍一式の提出が求められるのでしょうか。それは、「誰が相続人なのか」を客観的な資料で証明する必要があるからです。その資料となるのが戸籍です。

たとえば、預貯金の解約や不動産の名義変更(相続登記)を行う際、金融機関や法務局は「この人たちが間違いなく相続人である」ということを、戸籍によって確認します。家族の中では当たり前のように思っている相続関係も、戸籍という客観的な証拠がなければ、手続き上は認めてもらえません。

また、相続人全員で行う遺産分割協議も、そもそも誰が相続人なのかが確定していなければ始められません。戸籍収集は、相続手続き全体の土台となる作業なのです。

相続ではどの戸籍を集めるのか

基本的に、相続人確定のために必要な戸籍は次の2種類です。

① 被相続人の出生から死亡までの、連続したすべての戸籍

その人の人生において、結婚や転籍(本籍地の変更)のような出来事があると、そのタイミングで新しい戸籍が作られます。そのため、出生から死亡までの間に、複数の戸籍(除籍謄本・改製原戸籍を含む)が存在していることがほとんどです。これらを一つも欠けることなく、すべて取得する必要があります。

② 相続人全員の現在の戸籍

被相続人との関係や、現在ご存命であることを確認するため、相続人それぞれの現在の戸籍も必要です。

イメージとしては、以下のような流れで戸籍がつながっていきます。

被相続人の戸籍

出生
 ↓
婚姻(新しい戸籍へ)
 ↓
転籍(本籍地の変更)
 ↓
死亡

+

相続人A の現在戸籍
相続人B の現在戸籍
相続人C の現在戸籍

なお、相続人の中に先に亡くなっている方がいる場合(代襲相続)など、ケースによってはさらに必要な戸籍が増えることがあります。状況によって変わる部分も多いため、ご自身のケースで不安がある場合は、早めに専門家へ確認することをお勧めします。

戸籍の広域交付制度で取得しやすくなりました

戸籍の取得は、これまで「本籍地の市区町村役場」に請求する必要があり、本籍地を何度も移している方の場合、複数の役所へ個別に請求しなければなりませんでした。もちろん現地に出向かずに郵送で請求することも可能ですが、その分時間がかかります。

この負担を軽減するために、令和6年3月から「広域交付制度」が始まりました。これにより、本籍地が複数の市区町村にわたっていても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになっています。

ただし、いくつか注意点もあります。

  • 請求できる人は、本人・配偶者・直系の親族(父母・祖父母・子・孫など)に限られる
  • 窓口での請求のみで、郵送請求はできない
  • 一部、コンピュータ化されていない古い戸籍など、広域交付では取得できないものもある

※制度の詳細については、法務省の案内ページもご参照ください(外部サイトへ移動します。)

参考:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」

実際に、戸籍をご自身で取得された依頼者の方もいらっしゃいます。取得すべき戸籍が明確になっていれば、広域交付制度によって、取得作業そのものの負担はかなり軽くなったといえるでしょう。

しかし、取得した戸籍を正しく読み解き、相続人を確定させるという部分の重要性は、制度が変わっても変わりません。

戸籍は「集める」より「読み解く」方が難しい

広域交付制度によって、戸籍を取ることの大変さは以前より軽減されました。一方で、実際にやってみるとより難しいと感じるのが、取得した戸籍を読み解く作業です。

戸籍を確認する際には、主に次のような項目を見ていきます。

  • 身分事項欄:婚姻、離婚、転籍、認知などの”出来事”が記載されている部分
  • 続柄欄:被相続人と戸籍に記載された人との”関係”が記載されている部分

たとえば、死亡時の最新の戸籍を読むと、身分事項欄に「婚姻により新しい戸籍が作られている」ことを示す記載が見つかることがあります。これは、婚姻前にはさらに遡った戸籍(実家の戸籍など)が存在していたことを意味します。つまり、一つの戸籍を読むことで、次にどの戸籍を遡って取得すべきかが見えてくるのです。この判断を一つずつ積み重ねていくことで、最終的に出生から死亡までの連続した戸籍が揃います。

戸籍の読み方そのものは、専門用語も多く、慣れていないと一見しただけでは判断が難しい部分です。読み方の詳細なポイントについては、また別の機会に譲ります。

専門家に依頼するメリット

戸籍の収集や読み解きには、ここまで見てきたようにいくつもの判断が必要になります。すべてを自分で行うことも可能ですが、専門家に依頼することには、次のようなメリットがあります。

  • 必要な戸籍がすべて揃っているか、漏れなく確認できる
  • 戸籍を読み解いた結果、想定していなかった相続人が判明した場合にも、正確に対応できる
  • 収集した戸籍をもとに、相続関係を一覧化した「相続関係説明図」を作成できる
  • その後の遺産分割協議書の作成や、預貯金の解約手続きなど、一連の流れを見据えて進められる

戸籍を「取る」こと自体は、先述の広域交付制度の整備もあり、以前よりハードルが低くなりました。しかし、「揃っているかどうかを正しく判断する」「その先の手続きにつなげる」という部分には、やはり専門知識と経験が必要です。行政書士は、戸籍収集だけでなく、相続手続き全体を見据えながらサポートすることができます。

まとめ

  • 相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の現在戸籍が必要です
  • 令和6年から始まった広域交付制度により、戸籍の取得そのものは以前より便利になりました
  • しかし、取得した戸籍を正しく読み解き、相続人に漏れがないかを確認する作業には、専門知識が必要です
  • 「自分で集められるか不安」「読み方がわからない」という場合は、お早めに専門家へご相談ください

戸籍収集は、相続手続き全体の中でも最初の重要なステップです。請求先がわからない、読み方に迷う、本当にこれで揃っているのか不安——そうした不安は、一人で抱え込まなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。