法定相続情報一覧図とは?取得するメリットと手続きについて解説

行政書士の奥田です。
今回は、「法定相続情報一覧図」について解説します。
相続において、どのようなときに取得し、そして取得することでメリットがあるのか、見ていきたいと思います。
相続の手続きには、戸籍謄本一式が必要
銀行や証券会社の相続手続きや、不動産の相続登記を行うときには必ず、
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本一式
- 法定相続人の現在の戸籍
これら一式を揃えて提出する必要があります。
法定相続人を確定するため、戸籍を取得していくと、思いのほか通数がかさむ場合があります。
例えば、
- 転籍を繰り返している
- 結婚や離婚等で入籍・除籍を繰り返している
- 法定相続人が兄弟姉妹である
- 代襲相続や数次相続が発生している
このような場合、多い時は戸籍が10~20通にも及ぶ時があります。
手続き先が一つだけであれば、一度揃えて出してしまえば済みますが、相続財産は預金、不動産、株式、自動車等さまざまですから、手続きが一度だけ、という場合はあまり多くないのではないでしょうか。
そうなると、ただでさえ難しい手続きを行うのに、手続きの度に戸籍謄本一式を揃えたり、コピーを取ったりしなければならないのは、考えただけでも面倒な気持ちになると思います。
そこでご紹介するのが、「法定相続情報一覧図」です。
法定相続情報一覧図とは?
法定相続情報一覧図とは、相続関係を図形式(一見すると家系図のようなものです)に表したものです。
※列挙形式といって、表形式に相続関係を列挙していく一覧図もあります。

集めた戸籍謄本一式をもとに法定相続情報一覧図を作成し、必要書類とともに法務局に提出すると、法務局の登記官が内容を確認して、「これは法律で定められた相続関係として正しいですよ」というお墨付き(認証文)がもらえます(この制度のことを法定相続情報証明制度といいます)。
この法務局の認証を受けた法定相続情報一覧図があれば、相続の手続き先に戸籍謄本一式を提出しなくても、相続関係を示すことができるようになります。
取得するメリット
戸籍謄本を手続きの度に揃えなくてよい
手続きの度に、戸籍謄本を揃えて出すのは、思っている以上に大変です。
相続の手続き先によっては、「原本を返してほしい時は、原本との同一証明をしたコピーも添えてください」というところもあります。何ページもある戸籍が5通、10通、それ以上…これを毎回揃えて、場合によってはコピーを取って原本との同一証明もつけて…かなり骨が折れる作業です。
それが、「法定相続情報一覧図1通をつける」たったこれだけで済むようになります。
複数の手続きを並行して行える
法定相続情報一覧図は、法務局に申し出て認証を受け、交付してもらうことができますが、その際、申出書に、用途としてどのような手続きに使用するのか、理由をしっかり記載すれば、その用途の数だけ発行してもらうことができます。しかも、発行手数料は無料です。
法定相続情報一覧図を複数持っていることで、例えば
- 銀行預金の解約・払戻し
- 株式の移管手続き
- 土地や建物の名義変更(相続登記)
これらの手続きを同時並行して進めることもできます。
仮に、法定相続情報一覧図を取得せず、戸籍謄本一式で同じように進めようとすると、この場合、戸籍謄本一式を3セット取得しなければならないことになります。しかし戸籍謄本の取得には、例えば現在戸籍は450円、除籍や改製原戸籍は750円の手数料がかかりますから、費用もかさんでしまいます。
では3セット取得するのは現実的ではないからと、1セットを使い回して手続きを順番に進めていくことは十分に考えられますが、その場合、
1.銀行預金の解約・払戻し手続きで戸籍謄本一式を提出した
→原本の還付待ち
2.株式の移管手続きで戸籍謄本一式を提出した
→原本の還付待ち
3.土地や建物の名義変更(相続登記)で戸籍謄本一式を提出した
→原本の還付待ち
と、毎回戸籍謄本の原本が還付されるのを待つ期間が発生してしまいます。しかも原本を還付してもらうためには、「全ての戸籍のコピーをとって、原本との同一証明を記載して押印して…」という煩雑な作業をしなければならないこともあります。
「法定相続情報一覧図」を作成していれば、この労力をかける必要がないので、次々と手続きを進めることができ、速やかに相続の手続きを完了できるのではないでしょうか。
※手続きによっては法定相続情報一覧図ではなく、戸籍謄本の一式の提出を求められる場合もありますので、事前の確認は必要です。
取得の方法(法定相続証明制度の利用方法)
誰が制度を利用できるのか?
法定相続証明制度を利用して、法定相続情報一覧図の認証・交付を受けることができるのはどのような人でしょうか。
①被相続人の相続人(またはその相続人)
まずは、被相続人(お亡くなりになった方)の相続人(またはその相続人)がこの制度を利用することができます。その相続に関係のない人は利用することができないということですね。
※また、被相続人や相続人が日本国籍を有しない等、戸籍謄抄本を提出することができない場合にはこの制度を利用することはできません。
②①の代理人
相続人ご自身だけでなく、代理人に委任して申出の手続きを行うことも可能です。代理人となることができるのは下記のとおりです。
- 親族
- 弁護士
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 弁理士
- 海事代理士
- 行政書士
どこで手続きをするのか?
この制度の手続きは法務局で行うことは既に述べた通りですが、法務局は全国津々浦々にあります。では、具体的にどこの法務局に申出を行うべきなのでしょうか。
申出をする法務局は、以下の地を管轄する法務局のいずれかを選択することができます。
- 被相続人の本籍地(亡くなった時点の本籍地)
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
なお、手続きは上記いずれかの管轄法務局に直接出向いて行うこともできますが、郵送で行うことも可能です。「平日の日中に時間が取れない」といった場合は、お時間のあるときに書類を準備して、法務局に郵送して申出するという方法も検討してみるといいでしょう。
必要な書類は?
必要な書類は下記のとおりです。
【必須書類】
- 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
→メインとなる申出書です。法務局のホームページからダウンロードできます。
リンク先:法務局のホームページ(法定相続情報証明制度の具体的な手続について) - 法定相続情報一覧図
→法務局の認証を受ける元となる一覧図です。法務局のホームページに、相続関係のパターンごとにひな形が用意されていますので、ご自身に当てはまるひな形を選択して、アレンジして作成をするとよいでしょう。
リンク先:法務局のホームページ(主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例) - 被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本
→亡くなられた方の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)を用意します。 - 被相続人(亡くなられた方)の住民票除票
- 相続人の戸籍謄抄本
→相続人全員の現在の戸籍謄本(または抄本)を用意します。
※被相続人の死亡日以降のものである必要があります。 - 申出人(相続人の代表として、手続きを行う方)の氏名・住所を確認することができる公的書類
→運転免許証の裏表両面コピー/マイナンバーカード表面コピー/住民票記載事項証明書(住民票の写し)等が該当します。
必ず、原本との同一証明(相違なし)を記載し、申出人または代理人の記名をする必要があります。
※例えば、法定相続人が被相続人の子や親ではなく、兄弟姉妹であるような場合は、法定相続人であることを証明するために、親の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)を用意する必要が出てきます。戸籍を取得している段階で、法定相続人を証明するために戸籍はこれらで足りているのか?という疑問が出てきた際には、ぜひ当事務所へご相談ください。
【必要となる場合がある書類】
- 各相続人の住民票記載事項証明書(住民票の写し)
→法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合には、相続人の住所を証明するための資料として必要になります。
住所を証明する資料なので、他にも「印鑑登録証明書」や、「戸籍の附票」での代用が可能です。 - 委任状
→代理人に委任して代わりに手続きをしてもらう場合は、委任状が必要となります。
※行政書士等の資格者を代理人としてご依頼いただく場合は、その代理人が準備して委任状の書式に署名をいただく場合が多いです(当事務所でもそのようにしております)。
※親族が代理人になる場合は、委任状に加え、申出人との関係がわかる戸籍謄本が必要になります。もっとも、上記【必須書類】で用意する戸籍上で、その関係がわかる場合は、追加で取得する必要はありません。
法務局のホームページに、委任状の書式も用意されておりますのでご参照ください(リンク先の一番下にあります。)。
リンク先:法務局のホームページ(主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例) - 被相続人の戸籍の附票
→【必須書類】のうち、被相続人の住民票除票が古くて既に市区町村によって廃棄されている場合があります。その場合は、戸籍の附票を取得することで代用することが可能です。
これらの書類が全てそろったら、最寄の管轄法務局の窓口に直接出向くか、郵送にて書類を一式送付して申出を行います。
※郵送で申出を行い、認証された法定相続情報一覧図の交付を受ける場合は、法務局から一覧図を送付してもらうための返信用の封筒(郵便料金分の切手も用意します)を同封して郵送しましょう。
保存期間と再交付
法務局に申出をして、認証を受けた法定相続情報一覧図は、申出日の翌年から起算して5年間、申出をした法務局に保存されます。
そして、この5年間の保存期間中は、申出人に限り(相続人の代表1名の方が申出をした場合は、その方のみ)、書面で申出をすることで再交付を受けることができますので、当初取得した分では足りなくなってしまった場合でもご心配はいりません。
留意事項
これまで見てきたように、法定相続情報一覧図は相続の手続きにおいて非常に便利な書類ではありますが、いくつかの留意事項があります。
相続放棄をしていても一覧図には記載される
法定相続情報証明制度は、戸籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにするものですので、相続放棄をしている方がいても、法定相続情報一覧図にはその方の氏名等が記載されます。また、遺産分割協議の結果、相続分を持たないこととなった方も同様に、一覧図には記載されます。
相続放棄をした方がいる場合は、相続手続きにおいて法定相続情報一覧図に加えて、「相続放棄申述受理証明書」を提出して、相続放棄の事実を証明することになります。
推定相続人から廃除された方は一覧図には記載されない
推定相続人から廃除された方はそのことが戸籍に反映され、相続権がはく奪されます。このため、戸籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにする法定相続情報一覧図には記載されないことになります。
そうなると、例えば廃除された方に子がいた場合はその子は代襲相続人となりますので、一覧図には記載されますが、廃除された方(被代襲者)は記載されません。
こういった場合は、相続手続き先に対して予め、法定相続情報一覧図の他に必要となる書類がないか確認したほうが良いでしょう。
終わりに
今回は法定相続情報一覧図について解説をしました。相続関係を証明するための戸籍の数が多かったり、相続手続きの対象が多い場合には、戸籍謄本一式を揃えて行うよりもはるかに楽に、身軽に手続きできることがお分かりいただけたかと思います。
一方で、法定相続情報一覧図を作成する前提として、必要な戸籍を収集し、内容を読み解いて整理することや、必要な書類を揃えていくことは、慣れていない方にとってはなかなか大変な作業ではあります。
「自分で戸籍を集めてみたけれど、これで足りているのかわからない」
「相続人が誰になるのか整理できない」
「複数の相続手続きをまとめて進めたい」
このようなお悩みがありましたら、行政書士にご相談いただくことも一つの方法です。
当事務所でも、相続に関する戸籍の収集や法定相続情報一覧図の作成など、相続手続きのお手伝いをしております。
相続手続きについてお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
