代襲相続と数次相続の違い

行政書士の奥田です。

相続が開始すると、諸々の手続きに先立ってまずやることの一つが「相続人の確認」です。

相続人の確認は、戸籍謄本等を収集し、そこに書かれている内容を確認することで行います。その後、手続きによっては、「相続関係説明図」や「法定相続情報一覧図」などを作成し、相続関係を整理することもあります。

この工程を行うなかで、よく目にする言葉の一つに、「代襲相続」や「数次相続」があります。

どちらも「相続人が亡くなっている場合に関係する言葉」のため、同じようなことに思えるけれど、一体何がどう違うの?と思われる方も少なくないかと思います。

そこで今回は、「代襲相続」と「数次相続」の意味とその違いについて解説します。

代襲相続とは

まずは代襲相続について解説します。

代襲相続とは、被相続人が亡くなった時点で、本来相続人となるはずだった子または兄弟姉妹が既に亡くなっているなどの場合に、その人の子などが代わって相続人となることをいいます。

具体例を挙げてみましょう。

・被相続人Aは令和8年7月1日に死亡した。

・被相続人Aには妻Bと、子C、子Dがいる。

ここまでの情報だけを見ると、相続人は妻B、子C、子Dとなります。

しかし

子Dは、令和6年10月31日に死亡している。

この場合、子DはAより先に死亡しているため、Aの相続人にはなりません。

ここで

子Dには、妻Eと二人の子供FとGがいる

とします。

このような場合、子Dに代わって、その子であるFとGがAの相続人となります。なお、妻Eは相続人とはなりません。

※結果的に、被相続人Aの相続人は、妻Bと子Cと、子Dの子F、Gとなります。

これを「代襲相続」といいます。

なお、代襲相続が発生するのは、相続人となるはずだった人が先に亡くなっていた(死亡)場合だけではありません。相続欠格や廃除によっても代襲相続は発生します。
一方で、相続人が相続放棄をした場合は、その子は代襲相続人にはなりません。相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとして扱われるためです。

(注意)兄弟姉妹は再代襲しない

相続人が子の場合は、子が死亡していれば孫、孫も死亡していればひ孫と、代襲相続が続いていきます(再代襲)。一方、相続人が兄弟姉妹の場合は、兄弟姉妹が死亡していれば甥・姪までは代襲しますが、甥・姪の子には代襲しません(再代襲なし)。この違いにも注意が必要です。

数次相続とは

次に数次相続について解説します。

数次相続とは、被相続人が亡くなった後、その相続について遺産分割などが終わる前に相続人が亡くなり、その相続人が持っていた相続に関する権利や地位を、さらにその相続人が承継することをいいます。

具体例を挙げてみましょう。

・被相続人Aは令和8年4月1日に死亡した。

・被相続人Aには妻Bと、子C、子Dがいる。

ここまでの情報だけを見ると、相続人は妻B、子C、子Dとなります。

しかし

子Dは、Aの相続について遺産分割などが終わる前に、令和8年8月31日に死亡した。

Aの死亡後に、相続人であるDが死亡してしまいました。Dが代襲相続の例と同じ家族構成だった場合どうなるでしょう。

子Dには、妻Eと二人の子供FとGがいる。

この場合、Aの相続人であったDの相続人、つまり、Dの妻Eと、子F及びGが、Dの”Aの相続人としての地位を承継する”ことになります。

このように、

①DがAを相続する(一次相続)
②さらにE、F及びGがDを相続する(二次相続)

というように、相続が二段階、三段階と続けて発生するので、数次相続と呼ぶのです。

※結果的に、Dが持っていた「Aの相続人としての地位」は、Dの相続人である妻Eと子F及び子Gが承継します。
そのため実務上は、被相続人の妻B・子Cと、相続人Dの妻E・子F及び子Gの5人でAの遺産分割について協議を行うことになります。

代襲相続と数次相続の違い

ここまで、「代襲相続」と「数次相続」についてそれぞれ解説してきました。

では、つまるところ、両者の違いは何なのでしょうか。

取り扱った事例をベースに、一目でわかるように比較表としてまとめてみましたのでご参考になさってください。

比較項目代襲相続数次相続
発生するタイミング被相続人(A)の死亡以前に、相続人(D)が死亡・欠格・廃除となっていた場合被相続人(A)の死亡後、遺産分割が終わる前に、相続人(D)が死亡した場合
発生する原因死亡・相続欠格・廃除の3つに限られる死亡のみ
相続人となる人Dの子(F・G)が、Aの相続人として直接相続分を承継するDの相続人(妻E・子F・子G)が、Dが持っていた「Aの相続人としての地位」を承継する形で、間接的にAの相続に関わる
配偶者の扱いDの配偶者(妻E)は代襲相続人にはならないDの配偶者(妻E)もDの相続人として、Aの相続に関わる
相続分の計算Dが本来持っていた相続分を、F・Gが均等に分ける(1段階の計算)Dが本来持っていたAの相続分を、E・F・GがDの相続における法定相続分(妻1/2、子1/4ずつ)でさらに分ける(2段階の計算)

法定相続分はどうなる?(代襲相続・数次相続それぞれの場合)

代襲相続と数次相続、それぞれの意味と違いは分かってきたでしょうか。この記事で取り扱った事例をベースに、実際の法定相続分を見ていきましょう。

代襲相続の場合

(Dの相続分1/4を、F・Gが均等に分けます)

相続人相続分計算根拠
妻B1/2配偶者の法定相続分
子C1/4子の法定相続分(本来B=1/2、子C・D=1/4ずつのうちの1人分)
子F1/8Dの相続分1/4 × F・Gそれぞれの取り分1/2
子G1/8Dの相続分1/4 × F・Gそれぞれの取り分1/2

数次相続の場合

(Dの相続分1/4を、Dの相続人である妻Eと子F・子Gが、Dの相続における法定相続分でさらに分けます)

相続人相続分計算根拠
妻B1/2配偶者の法定相続分
子C1/4子の法定相続分(本来B=1/2、子C・D=1/4ずつのうちの1人分)
子Dの妻E1/8Dの相続分1/4 × Dの相続における妻の相続分1/2
子Dの子F1/16Dの相続分1/4 × Dの相続における子の相続分1/4
子Dの子G1/16Dの相続分1/4 × Dの相続における子の相続分1/4

このように、同じF・Gであっても、代襲相続か数次相続かによって、最終的な相続分が異なることになります。

両者を一覧で比較すると…

最後に、代襲相続と数次相続の両者の違いを横に並べて見てみましょう。

相続人代襲相続の場合数次相続の場合
妻B1/21/2
子C1/41/4
子F1/81/16
子G1/81/16
子Dの妻E(相続人とならない)1/8

いかがでしょうか。代襲相続と数次相続、意味を理解していくと法定相続分という点でも大きく異なることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

戸籍謄本を苦労して収集し、相続関係を読み取っていく際に、相続人のうちの誰かが亡くなっていた場合に、「これは代襲相続だ」、「いや、数次相続ではないか?」と混乱しなくて済むようになったのではないかと思います。

まず注目すべきは、被相続人と、亡くなった相続人の、”死亡したタイミング”です。

ここを見落としてしまうと、相続人の把握や相続分の計算などで誤った判断をしてしまう可能性があります。

当事務所では、戸籍の収集から相続人の確定、相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成など、相続に関するはじめの一歩からお手伝いをさせていただいております。

何かご不明、ご不安な点がありましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。